グローバル企業の人事を担当している私ですが、労務管理を担当しています。

海外の方々に日本の労働時間管理の方法をお伝えしているわけですが、海外と日本の文化の違いからか、あまり理解してもらえません。

 

ということで、今回は可能な限りデータ・実例を用いながら、日本での労務管理の重要性をお伝えしたいとおもいます。

 

1.日本の労働時間数は世界ではどのくらい長いの?

日本人は働きすぎ。とよく言われますが、実際世界から見たらどうなのでしょうか?

 

OECD(経済協力開発機構)発表の統計データによると、日本の労働時間は世界28位の1,607時間のようです。

台湾が載ってなくて困る。

 

なお、このデータは実労働時間を雇用者数で割っており、元々労働時間が少ない短時間労働者が入っていないようです。

 

2.長時間労働と健康障害の関係

厚生労働省の過労死等防止啓発月間に配布されたガイドラインに記載されている健康障害のリスクと時間外労働時間の関係性はこちらです。

以下の関係性については、医学的根拠に基づいた時間数となっており、この時間数が36協定の時間数に反映されています。

 

また、国は過労死等の防止に力を入れており、以下のような目標を定めています。

経験上、「週60時間以上」「年次有給休暇の取得率を70%以上」については、馴染みあるものでしたが、他の内容についてはそんなに馴染みのないものでした。

 

会社で設定するなら、上記のような条件ですかね~。

 

3.電通の過労死事件について

2016年に電通の新入社員が長時間労働・上司からの圧力により、自殺したという痛ましい事件が日本での長時間労働や過労死が大きな社会問題になりました。この問題は、通称、「電通事件」と呼ばれています。

 

この自殺した新入社員は月に100時間以上長時間労働していたそうです。36協定上100時間なんて働けるはずないのですが、上司が過少申告するように指示していたそうです。

 

その後、本件については、過労自殺として労災認定され、会社には家宅捜索、そして上司、および電通を法人として「労基法違反」として書類送検されました。

 

労働時間管理を上司が適切に行わず、最悪の結果になってしまった有名な事例です。また、この影響は当人だけでなく、会社の名誉も大きく傷つけ、電通=ブラック企業というイメージを植え付けてしまいました。

 

電通事件を契機に、36協定の上限時間を超えて残業等を行わせ、法人または上司が書類送検された会社として、日本の以下大手の会社が公表されています。

HIS:大手旅行会社

三菱電機:大手電機メーカー

パナソニック:大手電機メーカー

 

わたしたちの会社で、いつ、長時間労働が原因で労災案件が発生するか分かりませんが、人事として正しく管理職にはこのような事例、正しい労務管理の大切さをお伝えすることは重要です。

 

4.今後の展望

日本の厚生労働省が策定している「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」によると、使用者は労働者の始業終業時刻を確認し、適切に記録することとあります。

 

また、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録することとあります。

 

結局のところ、始業終業時刻については、自己申告で、その申告時間との乖離は入退場記録やパソコンの使用時間等から把握し、補正する必要があると記載されています。

 

客観的に管理する方法など、色々と考えていかなければなりませんね。

 

とりあえず、サービス残業はダメ。

 

引用

RICOH 働き方改革ラボ

OECD 労働時間データ

厚生労働省の過労死等防止啓発月間に配布されたガイドライン