グロスアップ(手取補償)ってご存じですか?

人事で給与を担当している方なら聞いたことがあるかもしれませんが、給与を支払う際に税額分を会社が補填して支払うことを指します。

まれに所得税・雇用保険料のグロスアップ計算をすることがあるのですが、考え方を一瞬で理解するのは難しいので、こちらの記事を作成ました。ぜひ、こちらのツールもご利用くださいませ。

 

グロスアップ計算(手取補償)とは?

繰り返しになりますが、グロスアップ計算は特定の手当に対して税額を補填するという考え方です。

 

以下のような前提で説明します。以下の例は、雇用保険料と所得税をエクセルで手計算している図です。

ここでは、雇用保険料と所得税はそれぞれ
雇用保険料:1,846円
所得税:4,700円
となっています。

この前提に加えて、追加で手当を100,000円支給すると仮定します。

すると、雇用保険料と所得税は10万円分増加しますよね。
雇用保険料:2,446円
所得税:8,640円

ですので、前述の金額との差分がそれぞれ雇用保険料・所得税で増加した分となり、最終的に4,540円が本人に支給するグロスアップ分(手取補償額)となります。
雇用保険料:600円
所得税:3,940円
手取補償額:4,540円

 

これで終わりではありません!

手取補償額を支給すると、この金額に対してさらに雇用保険料と所得税がかかってしまいます。

以下の図を見ていただくと、J列に4,540円の支給をしたことでAB/AC列の金額が若干増加していることがわかります。

 

手取補償額を支給すると、その金額が影響して手取補償額が変わっていっています。

もうお分かりかもしれませんが、このように手取補償額の支給→税額計算→新しい手取補償額の支給という流れを繰り返して、最終的に前回の計算結果と差がなくなったときが正しい手取補償額の金額となります。

 

二回目の計算はグロスアップ分を加算して再計算しています。すると、若干ですが、雇用保険料と所得税が増加しているのがわかると思います。

 

 

前の行のAK列の手取補償額をJ列のグロスアップ列に入力していっていることがわかると思います。4回目、5回目の計算でAK列の手取補償額の金額が変わっていないため、4回目の計算で終わりです。

つまり、10万を追加支給したとき、雇用保険料・所得税を本人に手出しさせないようにするためには、4,969円を支給すればよいということになります。

 

グロスアップ計算を手計算で行うには?

グロスアップ計算をするためには、

  • 所得税・雇用保険料を計算しないといけない
  • 算出された手取補償額を支給額に加えて繰り返し計算しなければならない

という面倒な繰り返しをしないといけません。

特に所得税の計算はとても面倒なので、結構時間がかかります。しかも複数人存在しているとなおさら面倒です。

 

ということで、グロスアップ計算を自動で行うツールを作成しました。

使い方は後述するとして、とりあえずダウンロードしてみてください。

 

グロスアップ計算ツール ダウンロード

ダウンロードはこちら

 

グロスアップ計算ツールの使い方

1.基礎情報と支給額を入力する

基礎情報と支給額を入力します。この時、ヘッダーのParam xという文字は自由に書き換えてもらって構いません。

税扶養人数には、控除対象となる扶養家族の人数を入力します。給与明細や給与計算システムで算出された税扶養人数を入力してください。

 

2.控除額(マッチング拠出)と通勤手当額を入力する

マッチング拠出(確定拠出年金の加入者掛金額)を入力します。ここでは20,000円をマッチング拠出としてS列に入力しています。

通勤手当も同様に課税分・非課税分を分けて入力します。

マッチング拠出と通勤手当の非課税分は所得税の課税はされませんが、雇用保険料の課税はされます。ですので、こちらの金額も正しく入力する必要があるということです。

 

3.社会保険料を入力する

健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料の金額を入力していきます。(介護保険料は40歳以上で控除されるものですが、ここではサンプルで入力しています)

 

4.追加支給分の金額を入力する

3.まで入力すると、AB列AC列に自動で所得税と雇用保険料の金額が表示されます。

AD列にグロスアップ計算をしたい対象の金額を入力します。

10万円と入力すると、雇用保険料と所得税の金額が変わったことがわかると思います。これで準備完了です。

 

5.Run GrossUp ボタンをクリックする

AG列にあるRun GrossUpボタンをクリックします。すると、AG列、AH列に雇用保険料分と所得税分の手取補償額が算出されます。AK列の金額は両項目を足し合わせたものです。

仮に所得税だけグロスアップしたいという場合にはAH列の所得税分のみを利用します。

 

上記計算が正しいかExampleシートで検算しています。グロスアップ計算の過程がわかりますね。

 

さいごに

所得税の計算についてはVBAで計算させています。実在者で何度もテストしていますので、ほぼ100%計算に間違いないとは思っていますが、ご利用される場合には自己責任でご利用くださいませ~。

 

気づいた点があればぜひフィードバックください。